当院薬局では新モデルコアカリキュラム(平成28年改訂)に対応した、実習プログラムを作成しています。
【1日のスケジュール】
時間 | 実習内容 |
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08:30~08:40 | 薬局内ミーティング |
08:40~09:30 | 処方せん調剤 ➡処方鑑査 ➡電カル鑑査 |
09:30~12:00 | ●病棟業務(付き添い) ●薬局業務(疑義照会、調剤、DI受付など) ●化学療法混注の見学 ●がん化学療法の指導見学(と記録) |
12:00~13:00 | 昼休憩 |
13:00~15:00 | ●注射せん調剤 ●病棟業務(付き添い) ●薬局業務(疑義照会、調剤、DI受付など) ●感染介入・感染ICTラウンド見学(木曜PMのみ) |
15:00~15:55 | レポート記入 |
【実習中のスケジュール】
評価項目:(1)-②、③
●院内での薬局の役割(求められる事)。他部署とのコミュニケーション。守秘義務・病状の告知未告知の注意について。
評価項目:(2)-②、③
●処方箋を見落としなくチェックする手法
●処方箋から必要情報を抜き出す
●処方箋×電カル患者情報との付け合わせチェック
●疑義照会への応対実習
評価項目:(2)-③
●注射箋の正しい読み方・調剤方法について
●注射薬の配合変化・投与濃度・投与ルートに配慮必要な薬・危険な薬などの注意(実例を挙げる)
●高カロリー輸液の混注実習(薬の性質と調剤タイミング)、化学療法薬の混注見学(外来化学療法の見学も行う)
評価項目:(1)-③、(3)-①
●急性期医療(外傷治療、発作治療)
●周術期医療(外科の消化器系手術前後ケア、整形の膝・腰などの手術前後のケア、それらによる経口摂取の注意、術後せん妄と対策)
●外来化学療法の管理(Excelでのレジメンシートをもとに管理、点滴化学療法薬の混注、指導内容・患者提供情報など)
●終末期医療への薬剤管理(せん妄時の最適薬の提案、栄養剤の提案、オピオイドローテーションなど適切剤型への変更、緩和剤の提案など)
●医療用語の実用例
評価項目:(2)-⑥
●ハイリスク薬の安全管理。金庫保管・麻薬箋・特定生物由来製剤の台帳など。
●調剤ミスを減らす為の工夫・体制について(調剤者と監査者は別・一人の場合時間を変えるor他職種の眼をかりる)
●インシデント・アクシデント発生時のフォローアップ体制(インシデントレポート、降圧剤の投与ミスなら血圧経過の観察など)
●感染予防での手洗い方法・各種防護着の着用方法
●感染性汚染物の正しい処理方法
評価項目:(2)-④、内容補完
●来院・入院者の情報把握(電カル・担当看護師の情報など)したうえでの応対実習。
※いわゆる「病棟薬剤指導」にあたる。当院では「病棟薬剤指導実施加算」も算定中。
●入院者(又は家族)からの情報聞取り実習(項目:生活習慣、コンプライアンスとアドヒアランス、アレルギー歴、副作用歴など)。正しい情報を聞き取る為のコツなど。
●服薬管理・服薬指導を行える(正しい薬を、正しい時間に入れ続ける為に行う)
●特別配慮必要な患者属性(妊婦、小児、高齢者、認知症患者、手先不自由)への対応例
●退院指導の実習。医療者の目を離れてもなお正しい服薬管理をするために、様々なデバイスとスタッフを活用する。
●電子カルテへの記載実習。
●「総合演習」の部分で、担当した患者さんについて発表をします。(パワーポイント作成のみの場合もあり)
【細かな実習内容について】
実習内容 | 対応するSBOs | 実習場所 | 実習内容を詳しく |
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倫理規範(全般) | (1)ー②ー4 | 薬局 | |
倫理規範(自己決定権) | (1)ー②ー5 | 薬局 | 例:がん発覚➡手術・化学療法or緩和の決定権。説明し理解・患者本人の意思決定手順。 |
倫理規範(インフォームドコンセント) | (1)ー②ー6 | 薬局 | 薬剤師➡患者へ「説明」できても、患者が「実は理解していない例」が存在。※一見確りした患者の例 |
倫理規範(守秘義務) | (1)ー②ー7 | 薬局 | 「無危害原則」の為。業務で知り「教えたい」気持ちを抑える。 |
病院内での薬局へのNEEDs | (1)ー③ー6 | 薬局 | 病院が薬局に求める働き(薬剤師にしかできない業務) 他職種連携の例 |
代表的疾患の入院治療 | (1)ー③ー7 | 薬局・各病棟 | ※詳細は別紙8疾患の項で説明する |
入院~退院の一連指導 | (1)ー③ー8 | 各病棟 | 代表的8疾患患者が当院ではどの様な流れとなるか。がん・肺炎等を例に |
急性期医療・周術期医療 | (1)ー③ー9 | 各病棟・救急室 | |
周産期医療・小児医療 | (1)ー③ー10 | ー | ※当院では現在実習できない |
終末期医療・緩和ケア | (1)ー③ー11 | 薬局 | キュアでなくケアする事例 |
化学療法の指導 (がん化学療法のみ) | (1)ー③ー12 | 化学療法室 | 指導用紙(○○療法の手引き)の準備 患者指導・問診ポイント 手引きを調剤薬局へ持っていく旨 |
化学療法の準備・事前カンファ | (1)ー③ー12 | 薬局 | 前週木PMに行う理由 準備可能な限り準備する理由 (一定の流れの為・当日の業務量を減らせる) Excelレジメンをもらう理由 化学療法薬の発注 |
がん治療の全体像について | (1)ー③ー12 | 薬局 | 当院でサポートする範囲 全体像を俯瞰するための視点を養う |
処方せん調剤・ 鑑査・ | (2)ー②ー7 (2)ー②ー9 | 薬局 | 処方せんの発行は前営業日~翌営業日とする理由 処方せん調剤の注意点 (調節必要薬を別包に・粉砕不可能薬の発見) |
電カル鑑査 | (2)ー②ー10 | 薬局 | 電カル鑑査時の注意 (新規薬・中止薬・指導注意薬・併用禁忌薬・ 腎機能などでの用量不適薬の発見) |
疑義照会 | (2)ー②ー11 | 薬局 | 医師の時間をなるべく割かないための工夫 準備として要点簡潔にまとめ・代案を用意しておく |
★粉砕・簡易懸濁法 | 薬局・各病棟 | 粉砕の方法。粉砕不可能薬の場合の対処方法 (例:類似薬効の可能薬にする)。 粉砕薬を投与場面を、実際見せていただく。 粉砕の理由:嚥下力低下で大粒が飲めない・PEGチューブ栄養・NGチューブ栄養・・・ |
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★注射せん調剤・鑑査 | (2)ー③ー14 | 薬局⇒各病棟 | 注射せんの種類と時間について。 (〆切は前日12時で、その前は定期注射・ その後は臨時注射) 注射せんの受付・調剤・鑑査の流れ |
★高カロリー製剤の取り扱い・混注 | (2)ー③ー17 | 薬局(安全キャビネット) | 看護師指示がきてから混注する理由 (急な中止で高価な薬がパーになる ・薬剤の安定性) 薬剤と溶媒(生食かブドウ糖液か)の相性 実際の混注風景観察 混注した薬を担当看護師へ交付 |
★服薬指導(臨時処方) | (2)ー④ー11 | 各病棟 | 「指導可能患者」であれば、随時患者訪室指導。 「指導可能かつ自己管理中」であれば、随時訪室し、指導&くすりの直接交付。 理解力はパッと見と違う場合が多い為、テストする方法も紹介する。 |
服薬指導 (特に要注意な処方薬) | (2)ー④ー12 | 各病棟or受付 | 注射薬」「着色する・副作用の強い薬」「服薬タイミングが特殊な薬」など。 |
患者理解度から 考える服薬管理方法 | (2)ー④ー13 | 各病棟 | 本当の患者理解度の見抜き方。 (一見ハキハキしてても、理解度NGの例。 耳遠く会話に時間掛っても理解力ある例) 患者理解度からみた薬管理形式 (理解力良い順に自己管理・看護師サポート自己管理・完全看護師管理・・) 退院後の薬管理形式の考察 |
★服薬指導(退院処方) | (2)ー④ー14 | 各病棟or受付 | 薬の本人管理が「可能である」➡本人へ交付・指導 「可能でない」➡薬の管理者に交付・指導 薬の管理形式は、本人の理解力・管理者の協力具合に応じて柔軟に変更する。 薬の管理力の見抜き方も解説する。 |
処方提案 | 各病棟 | 患者の困りごとの把握 困りごとの原因・解決法を推測 推測が正しいかどうか、患者や介護者へ聞取り(答え合わせ) |
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薬歴記載(SOAP形式) | (2)ー④ー15 | 病棟or薬局 | SOAPで記載した例示。 他職種が読みやすく・誤解ない記録。 |
医薬品管理の一連の流れ | (2)ー⑤ー9 | 薬局 | 全ての医薬品管理の基本 +で特別管理するのは麻薬・劇薬・向精神薬・・・など |
医薬品の在庫管理について | (2)ー⑤ー10 | 薬局 | 医薬品の在庫管理の |
★麻薬調剤の一連 | (2)ー⑤ー12 | 各病棟⇔薬局 | 麻薬処方箋の受取・調剤・鑑査・担当者への受け渡し 法令を守った管理 |
★麻薬購入の一連 | (2)ー⑤ー12 | 薬局 | 麻薬購入の各種伝票の受け渡し。 |
★劇薬・毒薬・向精神薬・覚せい剤減量の一連 | (2)ー⑤ー12 | 薬局 | 保管場所・(必要なら)台帳記入・納品時の応対について |
★特定生物由来製剤の一連の流れ | (2)ー⑤ー13 | 薬局 | 納品時の一連の流れ・調剤時の一連の流れ そのリスクについて (ハイリスク薬の講義プリント) |
TDM業務の一連 | (3)ー④ー4 | 薬局 | 対象薬(当院ではVCM等) TDM対象薬を見つける ➡TDM計算➡Drへの報告・処方提案 血中濃度が適正範囲外ならベイズ分析の方法 |
★院内感染対策 (ICTラウンド) | (4)ー①ー9 | 臨床検査室(エコー室) | ※木曜日16:00~16:30前後のみ 他職種(臨床検査技師・看護師・薬剤師・医師)による感染症例検討。 感染症例は「特定抗菌薬使用中」「特定感染症患者」の全てを拾い出す。 |
抗生剤の使い分け | 薬局 | 抗生剤の各系統とだいたいの守備範囲 (第一世代セフェムならグラム陽性菌、 第三世代セフェムならグラム陰性菌等) 濫用しがちな抗生剤(カルバペネム系) 特定抗菌薬(指定理由は抗MRSA・カルバペネム・キノロンと耐性化したらマズイ薬) 菌種不明でも、対象組織だけで考える抗生剤 (臓器移行性・だいたいのスペクトルで 肺炎なら肺移行◎のSBT/AMPCなど。) |
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NST活動 | (4)ー①ー9 | 3階病棟 | 栄養の計算 カンファレンス |
★高カロリー製剤の取り扱い・混注 | (2)ー③ー17 | 薬局(クリーンベンチ) | 高カロリー製剤へのビタミン剤 (ビタミン剤使用の理由・ビタミン剤入り製剤) 複雑な混注する症例 (例:高NaでNa避けて栄養構成したい) 混注主義・特に感染対策が厳密な理由 |
リスク高い薬の安全管理 | (2)ー⑥ー8 | 薬局 | リスキーな薬に対しての特別措置 出血傾向薬のリスト化・LAN配信・採用絞る |
調剤ミス防止策 | (2)ー⑥ー9 | 薬局 | そもそもミスをしにくいシステムにしている 例:規格毎にブランド名を変える、 規格数を絞る(ピルシカイニドの例)、 |
インシデント報告と内容 | (2)ー⑥ー10 | 薬局 | インシデントの定義 インシデントの報告方法(発生の経緯・同じミスをしないためのシステム変え) |
当院の安全管理指針 | (2)ー⑥ー11 | 薬局 | |
★院内感染対策 | (2)ー⑥ー12 | 各部署 | マスク使い分け (感染させない:サージカル、感染しない:N95マスク) 「標準予防策」として PPEの脱着・取り扱い方法 手洗い~手指消毒の実践 各部署感染ラウンド 多職種ICTラウンド 急な嘔吐者への対処 |
★感染性危険物の取り扱い | (2)ー⑥ー13 | 薬局・ 臨床検査室・ 各病棟 | バイオハザード廃棄BOXの使用 特に感染注意な薬・器具・検体について |
化学療法の処方 | 薬局 | レジメンの適用方法 (パス入力に限定する理由) Excelレジメンでの自動計算 (流れがはいつも同じ為、 システム化するのが安全・迅速である例) |
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(★訪問薬剤指導) | (4)ー②ー3 | 患者在宅 | 薬剤師が訪問する意義・症例の説明 在宅へ行く際の心構え |
DI業務 | 薬局 | 他職種からの薬関連の問合せ。 事例と対処法例・その考え方を紹介。 |
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当院の特徴・内容
●122床と小規模ですが常勤科4科・非常勤科6科を 備える総合病院です
●病床内訳は急性期45床、地域包括77床となります
●他職種(看護師・放射線技師・検査技師・臨床工学士・リハビリ技師)にも気軽に話せます。
●化学療法(がん・リウマチ・潰瘍性大腸炎)、感染対策ラウンド、栄養管理ラウンド、も行っています。
●併設の訪問看護ステーション・近隣保険薬局とも連携し時には訪問指導も行っています。
【実習レポートについて】
●「指導薬剤師に読んでもらいやすい文章」かつ「1年後の国家試験勉強で自分が読み返しやすい文章」を心がけてください。
●FUJIFILMのレポートシステムに沢山入力箇所がありますが、そこには「実習したことの題名」だけ書けばOKです。詳しい中身は1枚のWordファイルの中に、青本参考書の大分類・中分類・小分類ごとに書き足していき、毎日添付して送ってください。
※1枚に、大分類・中分類・小分類ごとに纏める事であとで自分が読み返しやすくなります
●Excel課題を毎週3問くらい課します。これも毎週、指導薬剤師までレポート添付で提出となります。
●決して「明日指導薬剤師がチェックしたら終わり」ではありません。
参考
評価方法について:「薬学実務実習の観点について(外部リンク)」
実務実習担当者 武井(実務実習認定指導薬剤師)